住宅ローンは変動か固定か:3つの金利タイプ、5年ルール・125%ルール、返済額の試算で考える
住宅ローンの金利タイプは変動型・固定期間選択型・全期間固定型の3つ。最新調査では7割超が変動型を選ぶ一方、金利上昇リスクの理解に不安がある人も半数を超えます。2026年11月の実際の金利と5,000万円・35年の試算で、5年ルール・125%ルールが「先送り」であって「免除」ではないこと、金利タイプを選ぶときに見る3つの点を整理します。
結論:変動は目先の安さ、固定は確実さの対価。鍵は「どこまでの変化に耐えられるか」を自分で計算すること
日本で住宅ローンを組むときは、契約時に金利タイプを選びます。この十数年は金利がほとんど動かず、変動型を選んだ人が損をする場面はまれでした。しかし日本銀行は2026年6月と9月に続けて利上げし、政策金利は1.25%程度に。各行の短期プライムレートもこれに追随して引き上げられ、変動型の負担は動き始めています[8][9][10]。この記事は結論を押しつけるものではありません。3つの金利タイプの仕組み、いまの実際の金利、変動型の借り手を守るとされる「5年ルール」「125%ルール」が何を守り何を守らないのか、そして5,000万円の試算表を整理し、ご自身で計算できるようにすることが目的です。
3つの金利タイプとは
全国銀行協会は住宅ローンの金利タイプを次の3つに分けています[3]。
- 変動金利型:金利はおおむね半年ごとに見直されます。元利均等返済(毎月一定額を返す方式)では返済額の見直しは原則5年ごと、元金均等返済では金利の変更に合わせて返済額が変わります[3]。
- 固定金利期間選択型:契約時に2年・3年・5年・10年などの固定期間を選び、その間は金利が変わりません。期間終了後は、その時点の金利で変動か再固定かを選び直します[3]。
- 全期間固定金利型:返済期間を通じて金利が変わらず、契約時に総返済額が確定します。その代わり金利は変動型より高めに設定されるのが一般的です[3]。
国土交通省の統計では、このほかに「証券化ローン」という区分があります。中心は住宅金融支援機構の【フラット35】で、実質的には全期間固定の一種です[2]。
3つのタイプが連動する指標も異なります。変動型は各行の短期プライムレートに、短期プライムレートは日本銀行の政策金利に連動します。10年以上の固定金利は主に長期国債の利回りに連動し、市場が織り込む将来の利上げや物価の見方を映します。日本銀行の統計によると、主要行の短期プライムレート(最頻値)は2025年3月が1.875%、2026年2月に2.125%、2026年8月に2.375%へ上がりました[10]。三菱UFJ銀行はさらに2026年11月2日から2.625%へ引き上げると公表しています[11]。2年足らずで0.75ポイントの上昇。これが変動型の借り手がいま置かれている環境です。
いまの金利はいくらか(2026年11月)
三菱UFJ銀行が公表した2026年11月の新規借入金利を例にとると、変動型の最優遇は1.195%、10年固定は3.89%、31〜35年の全期間固定は4.50%です[6]。住宅金融支援機構の【フラット35】(借入期間21年以上35年以下・融資率90%以下)の11月の最低金利は3.810%です[7]。つまり変動と長期固定の差はいま2.5〜3ポイント強。この差こそが選択を難しくしている原因です。差が大きいのは市場が今後も金利上昇を見込んでいるからで、固定金利にはその見通しがすでに織り込まれています。ただし実際の利上げが見込みに届かなければ、固定を選んだ人は保険料を払いすぎたことになります。
大多数は変動型:データが示すもの
住宅金融支援機構が2026年1月に、2025年4月〜9月に実際に住宅ローンを利用して住宅を取得した人を対象に行った調査では、変動型を選んだ人が75.0%、固定期間選択型が14.9%、全期間固定型が10.1%でした。変動型の割合は2025年4月調査より4ポイント下がっています[1]。同じ調査で、今後1年間に住宅ローン金利が上昇すると見る人は73.7%。一方、金利上昇で返済額がどれだけ増えるかという金利リスクについて、理解に少し不安がある・よく理解していない・全く理解していないと答えた人の合計は52.0%にのぼります[1]。
国土交通省が民間金融機関を対象に行った調査は、貸出金額ベースの数字です。2024年度(令和6年度)の個人向け住宅ローン新規貸出額のうち、変動金利型が83.5%、固定金利期間選択型が9.5%、証券化ローン(フラット35等)が4.9%で、変動型は前年度より0.8ポイント低下しました[2]。貸出残高では変動型が70.8%を占めます[2]。2つの調査が示すことは同じです。大多数が変動型を選び、利上げ開始後にその比率はやや下がったものの、流れが逆転したわけではありません。
5年ルールと125%ルール:先送りであって、免除ではない
変動型の借り手がよく耳にする2つの「保護ルール」があります。楽天銀行の用語解説は明快です。5年ルールとは、金利が上昇しても毎月の返済額を5年間据え置き、その後5年ごとに見直す仕組み。125%ルールとは、見直し後の返済額を従来の1.25倍までに抑える仕組みです[4]。いずれも元利均等返済にだけ適用され、元金均等返済では変更後の返済額に上限はなく、金利に合わせてすぐ変わります[4]。
ただし、見落としてはいけない点が3つあります。第一に、これらのルールは金利そのものを変えません。金利変更日以降の利息は新しい金利で計算され、返済額が同じでも、その内訳は利息の割合が増え、元金に充てられる部分が減ります[3]。第二に、金利の上昇幅が大きいと返済額で利息を払いきれなくなり、その差額が未払利息として積み上がり、元金は減りません[4]。第三に、すべての銀行・すべての商品がこの2つのルールを採用しているわけではありません。三井住友信託銀行は11月の金利変更の案内で、5年ごとに返済額を見直す商品では見直し時の上限が従来の125%である一方、年2回見直し方式の商品では4月1日と10月1日を基準日として金利に変更があれば返済額を再計算すると説明しています[5]。契約前に、自分のローンがどちらの方式かを確認することが欠かせません。
試算表:5,000万円・35年・元利均等
三菱UFJ銀行の11月の金利をもとに、5,000万円・35年・元利均等返済で簡略に試算します(事務手数料・保証料・団信の費用は含みません)[6]。
- 変動1.195%:毎月約14.6万円、うち初回の利息は約5.0万円。35年の総返済額は約6,121万円[6]
- 変動が0.25ポイント上がって1.445%:毎月約15.2万円[6]
- 変動が0.5ポイント上がって1.695%:毎月約15.8万円[6]
- 変動が1ポイント上がって2.195%:毎月約17.1万円[6]
- 【フラット35】3.810%:毎月約21.6万円、総返済額は約9,060万円[7]
- 10年固定3.89%:毎月約21.8万円(10年後はその時点の金利で再設定)[6]
- 31〜35年全期間固定4.50%:毎月約23.7万円、総返済額は約9,938万円[6]
ここから直接読み取れることがいくつかあります。変動型が0.25ポイント上がるごとに、この借入の毎月返済額は約6,000円増えます。約3.5%まで上がって初めて返済額が利息で食いつぶされ、未払利息が発生し始めますが、これは今日の返済額を基準にした計算です[6]。他方、全期間固定は初月から毎月約9万円多く払い、35年間の利息総額の差は3,000万円を超えます。変動金利がそう遠くない将来に4%近くまで上がり、それが長く続いた場合にだけ、固定型のほうが総額で有利になります[6]。どちらの道にも代価があり、だからこそ万人に当てはまる答えはありません。
選び方:見るべき3つのこと
第一に、金利を当てるのではなく、変化への耐性を見る。 変動金利が1ポイント、2ポイント上がった場合の返済額をそれぞれ計算し、世帯収入と照らし合わせます。2ポイント上昇後も返済額の収入に対する割合が許容範囲にあり、金利上昇時に繰上返済に回せる資金が手元にあるなら、変動型のリスクは管理できる範囲です。1ポイントの上昇で家計が苦しくなるなら、固定の確実さはその差額に見合います。
第二に、保有年数を見る。 全期間固定の上乗せは35年分の対価です[6]。10年以内に売却や完済を考えているなら、後半25年分の確実さに支払う必要はなく、10年固定と変動の比較で足ります[6]。逆に長く住み続ける予定で収入が安定している世帯は、全期間固定の安心を活かしやすいといえます。
第三に、契約の細部を見る。 5年ルール・125%ルールが適用されるか、金利見直し日と返済額変更日はいつか、固定期間終了後に優遇幅が縮小しないか、繰上返済や借り換えの手数料はいくらか[4][5]。これらは商品説明書と契約書に書かれており、金利の数字そのものより見落とされがちです。
収入が日本国外にある方や、家賃収入で返済する方は、もう一段の検討が必要です。円金利の上昇は為替の変動を伴うことが多く、家賃が金利に追いつく保証もありません。資金計画には金利と為替の両方のシナリオを入れておくべきです。
まとめ
日本の住宅ローンには変動型・固定期間選択型・全期間固定型の3タイプがあり、7割超の借り手が変動型を選ぶ一方、半数超が金利上昇リスクの理解に不安を抱えています[1]。5年ルールと125%ルールは上昇した利息を先送りする仕組みで、免除ではありません[4]。2026年11月の金利で計算すると、変動は0.25ポイント上がるごとに毎月約6,000円の増加、全期間固定は初月から毎月約9万円多い返済になります[6]。大阪での住宅購入をお考えでしたら、ぜひご相談ください。具体的な物件、借入額、収入の状況に合わせて、金利タイプごと・利上げシナリオごとの返済額を一緒に整理いたします。
出典
- 住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果<住宅ローン利用者調査(2026年1月調査)>(概要)」2026年2月20日(閲覧 2026年11月6日)
- 国土交通省 住宅局「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書(令和8年6月5日訂正)」2026年6月5日(閲覧 2026年11月6日)
- 全国銀行協会「変動で返す?固定で返す?住宅ローンの金利タイプ」2026年11月6日(閲覧 2026年11月6日)
- 楽天銀行「住宅ローン用語集:5年ルール・125%ルール」2026年11月6日(閲覧 2026年11月6日)
- 三井住友信託銀行「ローン金利の変更について(2026年11月2日付短期プライムレート改定に伴う)」2026年9月28日(閲覧 2026年11月6日)
- 三菱UFJ銀行「住宅ローン 金利一覧(2026年11月にお借り入れの場合)」2026年11月1日(閲覧 2026年11月6日)
- 住宅金融支援機構「【フラット35】借入金利の推移(2026年11月分)」2026年11月2日(閲覧 2026年11月6日)
- 日本銀行「当面の金融政策運営について(2026年10月30日)」2026年10月30日(閲覧 2026年11月6日)
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について(2026年9月18日)」2026年9月18日(閲覧 2026年11月6日)
- 日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移」2026年8月3日(閲覧 2026年11月6日)
- 三菱UFJ銀行「短期プライムレートの改定について(改定日:2026年11月2日)」2026年9月18日(閲覧 2026年11月6日)
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