日本に住所がない人の不動産購入:登記・契約・本人確認で準備するもの
海外に住み住民票がなくても、日本の不動産を買って所有者として登記できます。必要なのは住民票に代わる書類です。本国政府の住所証明書か公証人認証の宣誓供述書と旅券の写し、登記上の国内連絡先、不動産会社による取引時確認、そして取得後20日以内の外為法報告。法務省・国土交通省・財務省の定めに沿って整理します。
結論:住民票がなくても買えるが、書類の組み立てが変わる
日本で不動産を購入して所有権移転登記をするとき、買主の住所を証明する書類として通常は住民票の写しを提出します。海外に住む外国人には住民票がありませんが、それで購入や登記ができなくなるわけではありません。法務省は、外国に住所を有する外国人が所有権の登記名義人となる場合について、住民票に代わる住所証明情報の取扱いを定めています[1]。実際に時間がかかるのは、こうした書類を本国で用意して訳文を付けること、そして不動産会社や司法書士と連携して本人確認や遠隔での手続きを進めることです。
以下、「登記 → 不動産会社の本人確認 → 契約 → 購入後」の順に、海外在住の買主が準備するものを一つずつ整理します。
第一の関門:住所証明、住民票の代わりになるもの
2024年4月1日以後に申請する登記で、外国に住所を有する外国人が新たに所有権の登記名義人となる場合、住所証明情報は法務省の2023年12月15日付け通達に従い、次のいずれかを添付します[1]。
- 本国または居住国の政府(領事を含む)が作成した住所証明書面。日本の住民票の写しに相当するものです。政府が作成した電子データを出力した書面も、その政府の方法で真正性を確認できれば認められます[1]。
- 本国または居住国の公証人が認証した宣誓供述書と旅券の写し。宣誓供述書は、本人が氏名と住所が真実であることを宣誓して署名したものです。旅券の写しは、供述書の作成日または登記申請の受付日に有効で、氏名・有効期間・写真のページを含む必要があります。供述書と一体でない場合は、原本と相違ない旨の記載と本人の署名が必要です[1]。
旅券を持っていない場合は、その旨の上申書と他の本人確認書面の写し等を添付します。本国に公証制度がないなどやむを得ない事情があるときは、日本の公証人の認証によることも認められます[1]。外国語の書面には訳文が必要ですが、全文訳でなくてもよく、表題・氏名・住所・発行日・有効期間・発行機関・証明文言など証明に関係する部分を訳し、それ以外は省略する旨を記載できます[1]。
実務上どちらが便利かは、住んでいる国や地域でどのような証明書が取れるかによります。決済の直前になって書式が合わないと分かることのないよう、契約前に登記を担当する司法書士と様式を確認しておくことをお勧めします。
第二の関門:国内連絡先、登記に日本国内の連絡窓口を残す
同じく2024年4月1日以降、海外に住所がある個人や法人が所有権の登記名義人となる登記を申請するときは、「国内連絡先」に関する情報を提供します[2]。国内連絡先となる者は自然人でも法人でもよく、法務省は不動産関連業者や司法書士などを想定しています。適当な人がいない場合は「国内連絡先となる者がない」旨を記載できますが、その場合は登記名義人となる者が署名または記名押印した上申書を添付します[2]。
この仕組みの目的は、将来所有者と連絡を取る必要が生じたときに日本国内の窓口を確保することです。知人に頼む場合は法務局から連絡が来る可能性があることを事前に説明し、不動産会社や司法書士に頼む場合は費用の有無や引き受けてもらえる期間を確認しておくと安心です。
第三の関門:不動産会社の本人確認、旅券に加えて目的と職業も
犯罪収益移転防止法では、宅地建物取引業者は「特定事業者」とされ、宅地・建物の売買契約の締結またはその代理・媒介が「特定取引」に当たります[3]。取引時には、個人の顧客について氏名・住居・生年月日の本人特定事項に加え、取引目的と職業を確認しなければなりません。法人の場合は事業内容や実質的支配者も確認対象で、確認記録は7年間保存する義務があります[3]。
顔写真付きの本人確認書類には、運転免許証、マイナンバーカード、在留カード、旅券などがあり、一定の外国政府・国際機関が発行する書類等も使える書類として挙げられています[3]。国土交通省は、宅建業者がリスク評価書を作る際に、非居住者、非対面取引、支払い原資不明といった要素を踏まえるよう求めています[3]。海外の買主が購入目的や職業、購入資金の出どころを尋ねられるのは法律に基づく通常の手続きであり、説明と資料を前もって用意しておけばやり取りの回数を減らせます。
契約と重要事項説明:遠隔でもできるが、事前の承諾が必要
国土交通省は2021年3月30日から、売買取引でもテレビ会議等を使ったオンラインの重要事項説明(IT重説)の本格運用を始めています[4]。また2022年5月18日からは宅地建物取引業の書面を電磁的方法で提供できるようになりましたが、そのためには説明の相手方に意向を確認し、承諾を得る必要があります[5]。
つまり、海外の買主が説明を受けたり契約したりするために、必ずしも来日する必要はありません。ただし決済・引渡し当日に使う登記書類は原本が基本で、国際郵便の往復にも時間がかかります。契約の時点で司法書士から必要書類の一覧を受け取り、それに沿って本国で公証と翻訳を進めるのが確実な方法です。
購入後:20日以内の外為法報告、納税管理人、住所変更登記
外為法の報告。 非居住者が日本の不動産やそれに関する権利を取得した場合は、取得後20日以内に日本銀行を経由して財務大臣に報告書を提出します。本人のほか、居住者である代理人(不動産仲介業者等)も提出できます[6]。2026年4月1日施行の省令改正により、自己居住用の取得も報告の対象に含まれました[7]。
納税管理人。 非居住者が確定申告をしたり、税務署からの書類を受け取ったり、税金を納めたりする必要がある場合は、納税管理人を定めて税務署に選任の届出書を提出します[8]。毎年の固定資産税の通知や、賃貸収入の申告でも関係してきます。
住所変更登記。 2026年4月1日から、所有権の登記名義人の住所や氏名が変わった場合は2年以内に変更登記を申請する義務があり、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象になります。施行前の変更で未登記のものは、2028年3月31日までに登記が必要です[9]。将来、転居したり日本に移り住んだりしたときに忘れないようにしましょう。
まとめ
日本に住所がないことは購入の障害ではありません。住民票の代わりに本国の住所証明書または宣誓供述書を用意し、国内連絡先、本人確認、購入後の外為法報告を加えるという違いがあるだけです。時間面で滞りやすいのは、本国での公証・翻訳と国際郵便です。物件探しの段階で居住状況を不動産会社に伝え、契約時に必要書類の一覧を受け取っておけば、手続きはずっと進めやすくなります。海外にお住まいで大阪の物件をご検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。中国語にも対応し、手続きとスケジュールの整理をお手伝いします。
出典
- 法務省「令和6年4月1日以後にされる登記の申請に関し、外国に住所を有する外国人又は法人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の住所証明情報の取扱いについて(令和5年12月15日付け法務省民二第1596号通達)」2023年12月20日(閲覧 2026年11月7日)
- 法務省「令和6年4月1日以降にする所有権に関する登記の申請について(国内連絡先)」2024年4月1日(閲覧 2026年11月7日)
- 国土交通省 不動産・建設経済局不動産業課「犯罪収益移転防止法の概要について(令和8年4月)」2026年4月(閲覧 2026年11月7日)
- 国土交通省 不動産・建設経済局不動産業課「不動産の売買取引に係る「オンラインによる重要事項説明」(IT重説)の本格運用について」2021年3月30日(閲覧 2026年11月7日)
- 国土交通省「ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について」2024年12月(閲覧 2026年11月7日)
- 財務省「非居住者による本邦の不動産等取得に係る報告 制度の概要」2026年4月(閲覧 2026年11月7日)
- 財務省「外国為替の取引等の報告に関する省令の一部を改正します(令和8年4月1日施行)」2026年2月20日(閲覧 2026年11月7日)
- 国税庁「No.1923 海外勤務と納税管理人の選任又は解任」2026年4月1日(閲覧 2026年11月7日)
- 法務省「住所等変更登記の義務化について」2025年10月30日(閲覧 2026年11月7日)
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、投資・税務・法律上の助言ではありません。数値は末尾の出典の公表時点のものであり、その後変わる可能性があります。個別のご判断は専門家にご相談ください。
