ローン特約とは:住宅ローンが通らなかったとき、契約解除と手付金はどうなるか
住宅ローンを使って不動産を買うとき、売買契約には通常「ローン特約」が入ります。融資が承認されなければ買主は契約を白紙解除し、手付金の返還を受けられます。ただし特約には期限や申込先の指定があり、買主には誠実に審査を進める義務もあります。宅建業法と裁判例をもとに、確認すべき項目と特約が使えなくなる場面を整理します。
結論:ローン特約は買主の「安全弁」だが、期限内に、契約どおりの条件でしか使えない
住宅ローンを使って不動産を買う場合、売買契約を結ぶ時点ではまだ金融機関の正式な承認が出ていないのが普通です。「契約したのに融資が下りない」ときに買主が手付金を失わないよう、契約には一般に「融資利用の特約」、いわゆるローン特約が入ります。予定していた融資が承認されなかった場合に、買主が契約を解除して白紙に戻せるという特約です[2]。宅建業法もこの点を説明・記載事項にしています。重要事項説明では、代金に関する金銭の貸借のあっせんの内容と、その貸借が成立しないときの措置を説明しなければならず[1]、契約成立後に交付する書面にも、あっせんの定めがある場合は貸借が成立しないときの措置を記載する必要があります[1]。
ただし、ローン特約は「融資が下りなければいつでも白紙」という仕組みではありません。期限があり、申込先の金融機関と金額が決められ、買主には誠実に審査を進める義務もあります。以下、条項の中身、二つの型、特約が使えなくなる場面、買主としての実務上のポイントの順に整理します。
条項に書くべき項目
三井住友トラスト不動産の用語解説は、ローン特約には少なくとも次の三つを明記すべきだとしています[2]。
第一に、適用の条件。 どの金融機関から、いくらの融資を、いつまでに受ける予定か。最初の金融機関に断られた場合に、他の金融機関にも申し込む必要があるかどうか[2]。
第二に、解除時の売主の義務。 受け取った手付金や代金の返還です[2]。
第三に、解除時の買主の義務。 損害賠償責任を負わないことです[2]。
契約書を読むときは、この三つを一つずつ照らし合わせると漏れが防げます。とくに「金融機関名」と「承認取得期日」の欄は、後から争いになりやすい部分です。
二つの型:自動的に解除されるか、通知が必要か
コラムでは、ローン特約の書き方を二つの型に分けて説明しています[3]。
解除条件型:期限内に融資が承認されなければ契約は自動的に効力を失い、買主から売主への通知は必要ありません[3]。
解除権留保型:融資が承認されなかったとき、買主が解除権を得て、期限までに解除の意思表示を売主に到達させる必要があります[3]。同コラムは、実務では多くの契約がこの型を採っていると指摘しています[3]。
二つの型の違いが最もはっきり表れるのが期限です。同じコラムの設例では、買主が12月3日に金融機関から否決の連絡を受け、特約の解除期限は12月5日だったのに、売主への通知は12月7日になりました。解除権留保型ではこの解除は認められず、600万円の手付金も戻らないとされています[3]。期限を過ぎても契約の解除自体はできますが、手付金を放棄する手付解除によるしかありません[3]。
ローン特約が使えなくなる場面
誠実に申し込まなかった場合。 買主には速やかに、誠実に融資を申し込む義務があり、わざと遅らせたり申し込まなかったりすると、特約による解除の権利を失うおそれがあります[3]。モデル契約書でも、買主が融資の申込手続をしなかった場合や、故意に承認を妨げた場合には特約による解除ができない、という書き方がよく見られます[4]。
契約で指定した金融機関に申し込まなかった場合。 2025年の解説は次のような相談を取り上げています。契約にはA銀行の支店が記載されていたのに、買主は売主にも仲介業者にも知らせずにB銀行へ申し込み、否決されました。筆者は、契約の対象はA銀行に限られると読み、買主は特約による解除ができない可能性が高いとしています[4]。紹介された東京地裁平成22年(2010年)9月9日判決でも、指定外の銀行にだけ申し込んだ買主の「他の銀行も含まれる」という主張は退けられ、認められたのは手付解除でした[4]。
借りられるのに、買う気がなくなっただけの場合。 法律事務所の解説は、水戸地裁平成7年(1995年)3月14日判決を紹介しています。買主は購入意思を失っただけで、融資を受けられない客観的な障害はなかったとして、ローン特約による解除は認められず、仲介手数料の支払いが命じられました[5]。
仲介手数料の扱い
同じ解説の整理では、ローン特約によって売買契約が解除された場合、原則として仲介手数料は発生せず、支払済みの分は返還義務があるとされ、東京地裁平成24年(2012年)11月16日判決が例に挙げられています[5]。ただし、審査に協力しなかったなどの事情で特約による解除そのものが認められない場合は、この原則どおりにはなりません[5]。
買主にとっての意味
契約前に期限を逆算しておく。 三井住友銀行の解説では、本審査は申込みからおおむね1〜4週間かかり、期間は金融機関によって異なります[6]。本審査には売買契約書や重要事項説明書の提出が必要なため[6]、申込みは通常、契約後になります。特約の期限が短すぎる場合は、仲介業者と相談して余裕を持たせられないか確認しましょう。
申込先を契約と一致させる。 複数の金融機関に申し込みたい場合や、事前審査と本審査で金融機関が変わる場合は、契約後に自分で切り替えるのではなく、契約前に特約へ書き込んでおくべきです[4]。
解除は期限内に、書面で記録を残す。 解除権留保型では、期限内に売主へ到達させることが決定的です[3]。否決の通知を受けたらすぐに仲介業者へ連絡し、解除の意思表示が届いたことを書面で確認しておくと安心です。
外国籍の買主は早めの準備を。 在留資格や在留期間、収入証明の内容は審査の進み方に影響します。書類をそろえる時間も特約の期限の中に含めて考える必要があります。
まとめ
ローン特約は、融資が承認されなかったときに買主が契約を白紙解除し、手付金を取り戻せるようにする仕組みで、宅建業法は重要事項説明と契約書面に、貸借が成立しないときの措置を記載するよう求めています[1]。ただし有効なのは契約に書かれた金融機関、金額、期限の範囲内に限られ、期限を過ぎたり誠実に申し込まなかったりすると、手付金を放棄する通常の解除になってしまうおそれがあります[3][4]。契約前にこれらの項目を一つずつ確認しておくことが、後で争うよりはるかに確実です。大阪で住宅ローンを使った購入をご検討中の方は、どうぞお気軽にご相談ください。契約前にローン特約の内容を一項目ずつご説明し、審査のスケジュールづくりもお手伝いします。
出典
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第35条第1項第12号・第37条第1項第9号」2026年11月8日(閲覧 2026年11月8日)
- 三井住友トラスト不動産「不動産用語集「ローン特約」」2026年11月8日(閲覧 2026年11月8日)
- 三井住友トラスト不動産「融資利用の特約(ローン特約)に基づく売買契約の解除(不動産売買のトラブルアドバイス 2017年2月号)」2017年2月(閲覧 2026年11月8日)
- 三井住友トラスト不動産「ローン特約条項に基づく契約解除が認められない場合(不動産売却の法律アドバイス 2025年7月号)」2025年7月(閲覧 2026年11月8日)
- 弁護士法人みずほ中央法律事務所「ローン特約×仲介業者の責任|仲介手数料ゼロ・減額・損害賠償」2015年10月22日(閲覧 2026年11月8日)
- 三井住友銀行「住宅ローンの審査の流れとは?必要書類や注意点を押さえて解説!(Money VIVA)」2025年2月13日(閲覧 2026年11月8日)
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